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    幸田村

    福岡の劇団HallBrothers・主宰幸田真洋の日記とか雑記とかいろいろ。

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    幸田真洋

    Author:幸田真洋
    劇団HallBrothers主宰・脚本・演出・役者。

    次回公演は10月末。
    劇団初の県外公演です!

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    2013.04
    08
    久しぶりのシリーズ更新です。
    いろいろありました。シリーズはこちら。

    階下に住む迷惑な住人Aとその彼女。
    住民にイチャモンと呼んで差し支えないクレームをつける、激しい痴話ゲンカを真夜中に繰り広げる、
    エントランスにあるオートロック緊急解除ボタン(心臓が縮み上がるほどの激しい音が鳴ります)を押す・・・
    などなど、迷惑行為が絶えない二人であった。


    さて、前回のつづきです。

    ある晩。
    「起きて・・・起きて・・・」
    と奥さんが僕の体を揺すります。
    0時過ぎだったでしょうか。
    僕はその日疲れていて、夕食のあとにうとうとと眠りこんでいたのでした。
    「・・・え?なに?」
    寝ぼけ眼で奥さんを見ると、
    「外。外。」
    と小声でささやきます。
    ぼんやりベランダを見ると、開いている窓からなんだか男の喚いている声が聞こえました。
    「・・・あいつ?」
    Aです。
    うなづく奥さん。一気に目が覚めました。

    立ち上がり、カーテンに身を隠しながら外を見ると、まず数名の警察官の姿が目に入りました。
    そして警察官の後ろで、遠巻きに様子を見守る若い男女数名。
    彼らは一様に上を見て何か言っています。彼らの視線の先には僕らの隣の部屋・202号がありました。
    「こら、危ないけん、降りんね!降りんね!」
    A絡みの通報で、何度も来ていただいた顔なじみの中年警察官が、202の方を見て叫んでいます。
    「こいつが出てこんけんったい。オレは何も悪くなかろうが!」
    と、言い返すAの声がすぐ近くから聞こえます。
    え、まさか202に侵入してるの?と慌ててベランダに出て身を乗り出すと―

    202の階下、102がAの部屋です。
    そして、Aの部屋の前にはフェンスに囲まれた給水タンクがあります。
    なんとAはその上に上っていたのです。

    給水タンクは202に迫る高さまであります。
    Aはその上に立ち、202のベランダは目と鼻の先です。両手をかけてよじ登ろうとすればできる距離。
    しかしAはそうはせずにタンクの上で喚いています。202のベランダに侵入すればさすがに犯罪なのだと
    わかっているのでしょう。

    隣の部屋に視線を移すと、カーテンの隙間で人影が動いています。
    この部屋にはおそらく学生さんだろうと思われる若い女性が住んでいました。
    どうやら、彼女がクレームをつけられているようです。
    「いいけん、降りてこんね、降りてこんね!」
    警察官は必死にAを説得しています。
    「俺はただこいつと話しばしたいだけったい!」
    「話しさせるけん、話しさせるけん、降りてこんね!降りてこんと話しできんめえが!」
    警察官とのやり取りがしばらく続いたあと、おもむろにAは飛び降りました。
    それからしばらく下で話声が聞こえたと思ったら、静かになりました。建物の中に入ったようです。

    と、今度は階段を上がってくる音。
    玄関にまわり、ドアスコープからのぞくと、Aとその彼女の姿が。
    202のドアをガンガン叩き、「出てこい」と喚いています。
    彼女も泥酔した時のハスキー声で、郵便物受け取りの小窓を開け、そこに向かって
    「出てこんか!」
    と鬼ババのように叫んでいます。

    ベランダに移動すると、隣の部屋の女の子もベランダに出てきていて、警察官が
    「絶対開けたらいかんよ。」
    と声をかけていました。

    再び玄関にまわり、ドアスコープを見ると警察官二人がやってきてAと彼女を階下の彼らの部屋へ
    連れていったようでした。

    それを見て、外の警察官の後ろで見守っていた若者の一人(男性)が建物の中へ入り、202へ行きます。
    彼らは心配して駆けつけた友人たちのようです。

    それからしばらくして、手荷物を持った202号の住人と男性が出てきました。
    さすがにこのままいるのは危険だと思ったのでしょう。

    結局、その後彼女を見たのは昼間に一度きり。友人数人とこっそり荷物を取りに来ていた時だけでした。
    僕らが退去する時は、まだ部屋は借りたままの状態だったようですが、生活はしていなかったので、
    じきに出て行ったことだと思います。


    さて、この夜のその後ですが、Aとその彼女は202が出て行ったことであきらめたのか、おとなしくなり、翌朝まで
    騒ぐことはありませんでした。

    どういった事情だったのかは想像するしかありませんが、Aの喚いていた内容から察するに「部屋の中で202が
    うるさくしていた」ことに腹を据えかねたようです。
    僕らは隣ですが、一度もうるさいと思ったことはなかったんですけどね・・・

    「あいつ(202)はマジでキ○ガイよ。」

    とAは警察官に憤懣やるかたないといった感じで訴えていましたが、それはお前じゃないか、と警察官は
    思ったことでしょう。
    もちろん、僕も思いました。


    つづく。





    2013.01
    06
    前回はこちら。

    階下に住む迷惑な住人Aとその彼女。Aにキレた我が奥さんに復讐?するべく、Aが挑んできた。実家へ逃げ帰ろうとした僕らであったが、Aと対峙することに…


    「・・・何ですか?」
    階段を下りて、Aの前に立ちました。まわりには警察官がいます。
    僕は喧嘩など苦手なタイプですが、警察官がいてくれるので安心です。
    落ち着いて、できるだけ穏便に、Aを刺激しないように話しかけます。
    「話って何ですか?」
    「いや、だけんさ、迷惑っちゃろ、俺ら。」
    「いや、まあ・・・どうでしょうね・・・」
    迷惑だよ、バーカ!早く出て行け!と言えたら、どれほどスッとすることでしょう。
    しかし、そんなことは絶対に言えません。
    「けどね、俺らも迷惑しとうったい。」
    「はあ・・・」
    「あれ、うるさかろうが。」
    Aは、オートロック緊急解除ボタンのことを言っているようです。
    「あれ鳴ったら眠れんけんね。俺らも迷惑しとうったい。」
    ・・・鳴らしているのはお前じゃないか、と思いましたが、実はそれを証明する手立てがないのです。

    そうなのです。
    僕らが住んでいる集合住宅には防犯カメラはついていませんでした。
    なので、状況から見て明らかにAだろと誰もが思っても、どうしようもないのです。
    いくら僕が向かいのビルに映るAの様子を主張しても、それを証明しようがありません。
    Aは、そのことを知っているのです。ですから、いつどんな時でもふてぶてしい態度でいられるのです。
    もちろん警察だって、いつもAが近くにいても犯人だと断定できません。

    「むちゃくちゃ迷惑やろ。ほんと眠れんけんね。」
    「まあ、そうですね。何で鳴るんですかね。」
    「知らんよ。勝手に鳴ろうが。」
    勝手になんて鳴りません。警察だってそう思ってます。けれどどうしようもないのです。
    「とりあえず、管理会社に連絡してみたらいいんじゃないですか。」
    「したけど、何もせんめえがあいつら。」
    「ああ・・・でも、僕らに言われてもどうしようもないですし・・・」
    「だけど、奥さん俺に文句あるっちゃろ。」
    「いや、文句あるわけじゃないですよ。」
    「いや、文句あるやん。」
    「ないですって。」
    「いやね、文句あるならはっきり言って。堂々と言ってくれていいけんさ。そしたら俺らも悪いとこあれば直すけんさ。」
    「いや、ないですよ・・・」
    と押し問答をしていると、Aの彼女が出てきました。今夜は飲んでいないらしく、おだやかな感じです。
    相変わらず目の下のクマは異常にありましたが・・・
    「なんか、すいません迷惑かけて・・・」
    「あ、いやいや・・・」
    「なんか、納得がいかないらしんですね・・・」
    「納得?」
    「そうって。だけん、呼んで、奥さん。文句あるなら直接言って。」
    「だから、なんか自分らが悪いって思われてるのが納得いかないみたいで・・・」
    「いや、いいとよ。悪いって思うなら思っていいけんさ、直接言ってよ。」
    このカップルは一体何を言っているのだと、途中からよくわからなくなりました。まあ、最初からわかってはいなかったですが・・・
    何といいますか、日本語が通じない。まともにコミュニケーションが取れないのです。
    男はわめくだけ。女はなんか納得いかないらしいんですね、と繰り返すだけ。
    というか、そもそもなぜ僕らがAの納得するしないに付き合わなければいけないのでしょう。そんなのAの問題ではないですか。

    そうこうしていると、たまりかねた奥さんが降りてきました。
    挑戦的な目で、Aを見据えています。
    「何ですか。」
    「いや、だけんさ、文句あるっちゃろ。言っていいよ。何?」
    「・・・・・・」
    奥さん、今日は黙っています。言ったって埒が明かないとわかっているのでしょうか。
    「だけんね、俺らは迷惑しとうったい。あれ鳴ってさ。」
    「・・・・・・」
    「大体、あれやろうが。あれ鳴っても誰も降りてこんめえが。だけん俺が止めるしかないったいね。」
    どうやら、Aの中ではそういうストーリーになっているようです。自分で鳴らしているくせに。」
    「おかしかろ?誰も降りてこんやん。普通はみんな出てくるよ。俺が前に住んどったとこはあれやもんね。こういうのあったらみんな出て来よったよ。」
    と、何故だか話はAの過去へと展開していきました。

    糸島、西区、中央区と彼らは転々としてきたらしく、端的に言うとそれらの場所に比べて、今住んでいるところは住民が冷たい、無関心だと、そういうことが言いたいようでした。
    Aもその彼女も、理路整然と話してくれるわけではないので、正直、何を言っているのか、何が言いたいのかはさっぱりわかりません。

    しかし、ともかく聞くことが大事だと、うんうんと耳を傾けていました。
    そのうち、Aはすっきりしてきたらしく、最後には上機嫌になって「今度一緒に飲もうや。」などと言い出す始末。
    ・・・寂しいの?誰かに話聞いて欲しかっただけなの?え、そういうこと?
    Aの彼女も機嫌がよくなったAを安らかな顔でうんうんとうなづきながら見ています。
    何も解決していませんが、なぜだかとりあえず一件落着的な空気になりました。

    結局、僕らも自宅へ引き返し、警察官たちも帰っていきました。
    Aも再びインターホンを鳴らすことはなく、その晩は平和が戻ってきたのです。

    一体、Aというのは何なんでしょう。
    攻撃された奥さんに仕返ししたいのかと思いきや、最終的には自分の話したいことだけ話して勝手にすっきりしている。
    そんなに話したいのでしょうか。そんなに誰からも相手にされていないのでしょうか。
    確かに、何の仕事をしているかわかりませんし、昼間もいつも家にいます。もしかしたら、仕事をしていないのかもしれません。
    彼女に話すだけでは満たされないのでしょうか。そんなに世界からはじかれた存在なのでしょうか。
    そう考えると、若干、同情しないでもないですが、だからといって飲み友達にはなりたくありません。

    この後、しばらくは落ちついた期間が続くのですが、そのまま終わるほど、Aは甘いものではありませんでした。

    つづく。


    2013.01
    05
    いろいろありました。シリーズはこちら。

    集合住宅の階下に住む、迷惑千万なクレーマーA。同棲中の彼女と派手な痴話喧嘩を繰り返し、オートロック緊急解除ボタンを押しては、警察がやってくる。
    住民たちはうんざりしつつも、関わり合いになるまいと沈黙していたが、ついに我が奥さんが正面きってキレた。


    前回、奥さんが対決姿勢を打ち出してからすぐには、何事も起こりませんでした。
    エントランスすぐ横のAの部屋の前は、出かける時帰ってくる時、嫌でも通らなければいけません。
    その度に、ドアがガチャリとあいてAがヌッと現れ、「テメエら、この間はよくも・・・」と言われるのではないかとビクビクしていましたが、もちろんそんなことはありませんでした。
    「ちょっとは反省したんじゃないの?」
    と奥さんは脳天気なようでしたが、この数か月、Aの粘着質ぶりはわかっていたので、僕はそのうち何かあると戦々恐々としていました。
    そしてやはり、僕の想像は正しかったのです。

    ある晩、インターホンが鳴りました。
    絶対Aだと思い、カーテンの隙間から向かいのビルの窓ガラスに映ったエントランスの様子をこっそり眺めてみました。
    やはり、Aです。
    オートロック操作盤の前にじっと立っています。
    生唾を飲みこみ、その様子を眺めていると、Aの指が操作盤に触れました。
    そして鳴る、我が家のインターホン。
    「あいつ?」
    と奥さんは臨戦態勢です。
    「うん・・・」
    「出る?」
    「い、いや、出なくていいよ。」
    何するかわからないようなヤツです。いきなり刃物とか持ち出されてもたまったものではありません。
    「しばらく様子見ようよ。」

    ピンポーン。

    インターホンは数分おきになります。
    もちろん、Aです。じっと操作盤の前に立っています。
    血の気の多い奥さんをなんとかなだめながら、僕はただただAの様子を観察していました。

    と、おもむろにAがオートロック緊急解除ボタンを押しました。けたたましい音が辺りに鳴り響きます。
    「警察、警察呼ぼう!」
    すぐに110番をし、事情を説明しました。
    10分ほどして、すぐに三名の警察官がやってきます。
    エントランス付近にいたAは事情を聞かれていましたが、何やらわめきはじめました。
    「だけん、話しさせろって言いよったい!」
    明らかに、僕らのことを言っているようです。
    警察官たちはわめくAをとりあえず部屋の中へ押し込め、僕らの部屋へと上がってきました。
    「なんか、話しさせろって言いようけど、どういうこと?」

    どうもこうもありません。Aは前回奥さんに怒鳴られたことを逆恨みしているだけで、何も話すことなんてないんですから。
    警察官たちにこれまでの事情を話し、今夜はとりあえず実家に避難することにして、エントランスを出るまで付き添ってもらうことにしました。
    急いで荷物をまとめて、部屋を出ます。
    まず、二名の警察官が先に降りて行きました。
    その後に僕、奥さん、そして残る警察官を続くはずでしたが・・・

    先行の警察官二名が降りていくと、すぐにガチャリとドアが開いてAが出てきました。
    「(部屋に)入ってろ。」
    若い警察犬がAをたしなめますが、聞く耳持ちません。
    「いやいや、俺はあいつらに話があるっちゃけど。」
    Aの目は、階段の途中で止まっている僕をロックオンしています。
    「いいけん、入っとけ。」
    「だけん俺はあいつらと話があると。あんたら関係ないやろ!」
    警察官の圧力に全く屈せずわめくA。
    「奥さん出しいよ。文句あるっちゃろ。」
    Aは僕に怒声を浴びせます。
    「いや、出せません。」
    「いやいや、なんで?俺は奥さんと話しがあると。」
    「じゃあ僕が代わりに話しますんで。」
    「だけん、奥さん出しいよ。」
    「出せません。」
    僕なんかよりたくましいですが、一応女性である奥さんを危険にさらすわけにはいかん、というヒロイックな気持ちも若干はありましたが、それよりもこれ以上火に油を注がれてはたまらないという思いがありました。
    「とりあえず、話します。」
    後ろにいた年配の警察官にそう言って、階段を下りました。

    つづく。



    2012.11
    13
    いろいろありました。シリーズはこちら。

    クレーマーで、かつ派手な痴話喧嘩を繰り返す迷惑な階下の住民Aとその彼女。
    Aは部屋の外へ締め出されると、オートロック緊急解除ボタンを押すという迷惑行為を学んだ。


    一か月に一回は喧嘩をするAとその彼女。
    そして必ず緊急解除ボタンを押すA。
    警報音は夜中の住宅街に鳴り響き、Aは素知らぬ顔。
    僕は毎回警察に電話をし、警察が「またか」という顔でやってくることが数か月続きました。

    ある夜。
    23時ごろに帰宅し、遅い夕食を終え、奥さんと一杯飲んでいると突然インターホンが鳴りました。
    時計を見ると0時を回っています。
    こんな時間にインターホンを鳴らすような非常識なやつは・・・嫌な予感がよぎりました。
    奥さんと顔を見合わせ、どうしようと困惑していると再びインターホン。
    面倒くさいけれどこれは出るしかないと、インターホン越しに返事をすると、やはりAでした。
    「ちょっと話があるっちゃけど、こっち来るか、そっち行っていいかいな。」
    Aはふてぶてしい声で言います。Aの部屋に行くのは恐ろしかったので、こっちへ来てくださいと返答しました。

    階段を上がってくる音が聞こえ、部屋のチャイムが鳴ります。
    奥さんは部屋に残し、扉を閉め、僕一人で玄関のドアを開きました。
    「悪いね、夜遅く。」
    相変わらず不健康な顔をしたAが立っています。

    「警察、呼んだろ?」
    「・・・え?」
    「いやいや、何回か警察呼んだろ?俺ら派手に喧嘩するやんか?」
    「ああ・・・」
    「で、何回か警察呼んだろ?」
    「ああ・・・いや・・・」
    「いいっていいって、わかっとうって。いつも警察来るけんさ。呼んだやろ?」
    「ええ・・・まあ・・・なんか警報音が鳴ってるって・・・110番したことはありますけど・・・」
    一瞬、何か文句をつけられるのではと身がまえましたが、よく見るとAはどことなく上機嫌でした。

    「悪かったね。」
    「ああ・・・いや・・・」
    「いや、今日昼間さ、引っ越しようやつがおったけんさ、もしかしてあんたんとこかな、と思って。」
    確かに、昼間引っ越しをしている部屋がありました。おそらくAがうるさくて出て行ったんでしょうが・・・
    「いやいや、うちは別に・・・見ての通りです。」
    「俺らのせいで引っ越すとかなったら嫌やけんさ。俺らも迷惑かけとうけんね。」
    一応、迷惑かけていることは認識しているようです。
    「それを確かめに来たったい。」
    「ああ・・・そうですか・・・。いや、まだ引っ越さないですよ。」
    「そうね。ならいいけど。」

    何故だか僕はAから妙な親しみを持たれていました。
    僕は嫌ですが、Aは勝手に僕のことを仲間みたいな意識でいたんでしょう。なので、僕が自分のせいで引っ越すことになったのではないかと心配したようなのです。

    「これ、迷惑かけたけんさ・・・」
    と、Aがおもむろに液体洗剤のダウニーを差し出しました。
    「・・・は?」
    「いや、迷惑かけたけんさ。もらって。」
    「ああ・・・いや・・・」
    「いいけん。結構ニオイがすごいらしいよ。」
    「ああ・・・そうですか・・・じゃあ・・・」
    断って逆ギレされても嫌なので、ダウニーをもらうことにしました。
    「ホント悪かったね。いや、俺もストレスたまっとったけんさ。」
    「ああ・・・いや・・・」
    ストレスがたまっていたからといって人に迷惑かけていいというものではありませんが、改心して今後おとなしくなるのなら言うことはありません。

    「今度、一緒に飲みたいね。酒飲めると?」
    「ああ・・・まあ、それなりには・・・」
    「飲めそうな顔しとうやん。」
    「いや、それほどでも・・・」
    Aはやたらフレンドリーに接してきます。僕も突然キレられたら嫌なのでへらへら調子を合わせていると、いきなり部屋の扉が開いて、うちの奥さんがものすごい勢いで飛び出してきました。
    「あなた何時だと思ってるんですか?」

    奥さんは目がつりあがり、充血して、激しく怒っていました。
    「大体、こんな時間に来ること自体が非常識でしょ。で、何が言いたいんですか?何の用なんですか?え、何時だかわかってます?おかしいでしょ?おかしいことわかってます?」
    と、ものすごい勢いでまくし立てます。

    Aと敵対したくないと思っていた僕はアワアワして、けれども一度火がついた奥さんを止めることはできません。
    一方Aは、なんと表現したらいいのかわかりませんが、一切の思考が停止したかのようにピタリと止まっていました。
    よく小説なんかで「穴のあいたような目」という表現が出てきますが、まさにそんな感じの目で、感情も何もないような、無といった雰囲気で停止していました。

    やがて、Aはゆらりと動きだし、玄関のドアを開けました。
    「いや、あの・・・すいません・・・」
    僕はAに恨まれないよう、別に謝らなくてもいいのに謝ったりします。
    「いいよ。奥さんの言う通りやけん。悪かったね。ただ、仲良くしたかっただけやけんさ・・・」
    Aはゆっくりと階段を下りていきました。


    奥さんは、部屋でじっと僕らの様子を聞いていてだんだん怒りがわいてきたそうです。
    さんざん迷惑かけまくっていて、本当に謝罪の気持ちを伝えたいならまず深夜に来るな、と。
    しかも謝ってさっと帰ればいいのに、うだうだと無駄話をして、お前何がしたいんだ、と。

    もちろん奥さんの気持ちもわかりましたが、触らぬ神にたたりなし、僕は対決姿勢は打ち出さずになんとかやり過ごしたかったんですが・・・


    この後、Aは明らかにうちの奥さんを敵視するようになっていくのでした。


    つづく。


    2012.11
    12
    いろいろありました。5のつづき。

    集合住宅の階下に住むAとその彼女。
    彼らは凶悪なクレーマーであり、泥酔しては派手な痴話喧嘩を繰り返し、迷惑千万な住民であった。


    Aとその彼女は一か月に一回ほど、激しい喧嘩をします。
    たいていAが外に締め出されて、「開けんや!開けろって!」とドアをガンガン蹴る、という流れになるんですが(Aも学習して、カギを肌身離さず持っておけばいいのに。ま、それはおいといて・・・)、ある時、Aはとんでもなく迷惑なことを発見しました。

    エントランスにあるインターホンの上、天上に近いあたりに「緊急解除ボタン」なるものがあります。
    「非常時以外は押さないでください。」とただし書きがあるボタンで、これを押すとものすごい警報音が鳴り響きます。
    Aが、こいつを鳴らすことを覚えたのです。

    ある時、いつものように喧嘩が始まりました。
    向かいの窓に映り込んだエントランスの様子を見つめていると、締め出されたAがふと、天井の方へ視線を向けました。そして手をのばし、ジャンプするようにして壁をタッチしたのです。

    僕もそこに何かボタンがあるなとは思っていましたが、「非常時以外は押さないでください。」と書いてあるし、どういったことが起るのか全く知りませんでしたが・・・

    尋常ないほどの警報音が夜の住宅街に響き渡ります。
    救急車とか、パトカーとか、あのくらいの、その音色も音量も明らかに「緊急事態」とわかるほどの警報音です。
    Aは、押した後は何食わぬ顔して集合住宅の外へふらふらと出て行きました。自分は何も関与していませんよ、という顔で。

    警報音は鳴り続けます。待てども待てども一向に鳴りやまない。
    僕も奥さんもどうやって止めていいのかわかりませんし、止めようとボタンをいじっていてAに絡まれても嫌だし。
    そうすると、通りがかりの人がぎょっとした顔でやってきて、ボタンのあたりを見ています。
    と、そこへAが戻ってきました。

    「これ、どうしたんですか?」と通りすがりの人。「さあ。」とA。さあじゃねえよ、お前が押しただろうが!とベランダの手すりを握る僕の手に腹立たしさがこもります。
    「ともかく、管理会社に電話してみましょう。」
    と通りすがりの人が、壁にかかっている管理会社の看板を見て電話をしました。しかし、電話には誰も出ない。
    当たり前です。夜中の24時を回っているんですから。
    困った通りすがりの方は、結局警察に電話をしました。その間も警報音はガンガンなり続けています。

    しばらくして、警察がやってきました。
    警察、通りすがりの人、Aがエントランスでああでもないこうでもないと警報音を止める方法を模索しています。
    と、音が鳴りやみました。どうやら無事停止する方法が見つかったようです。

    通りすがりの人は帰って行き、Aが警察に事情を聞かれています。
    Aは自分が押したくせに「知らん」などと平然と言ってのけます。「俺は自分の部屋に帰りたいだけやけど、中に入れんっちゃんね。あんたがあいつに開けろって言ってよ。」などと偉そうな態度で警察にからんだりもします。
    埒があかない警察はインターホン越しにAの彼女を説得、Aはようやく部屋へ入れました。

    そしてAは「こいつを鳴らせば警察が来て、部屋へ入れる」というとんでもなく迷惑なことを学習したのでした。
    鍵を肌身離さず持っておくということは学習せずに・・・

    つづく。






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