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    幸田村

    福岡の劇団HallBrothers・主宰幸田真洋の日記とか雑記とかいろいろ。

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    幸田真洋

    Author:幸田真洋
    劇団HallBrothers主宰・脚本・演出・役者。

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    HANARO project vol.4『セレモニー』演出 6/30~7/2

    劇団HallBrothers公演は10月ごろ

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    2013.01
    06
    前回はこちら。

    階下に住む迷惑な住人Aとその彼女。Aにキレた我が奥さんに復讐?するべく、Aが挑んできた。実家へ逃げ帰ろうとした僕らであったが、Aと対峙することに…


    「・・・何ですか?」
    階段を下りて、Aの前に立ちました。まわりには警察官がいます。
    僕は喧嘩など苦手なタイプですが、警察官がいてくれるので安心です。
    落ち着いて、できるだけ穏便に、Aを刺激しないように話しかけます。
    「話って何ですか?」
    「いや、だけんさ、迷惑っちゃろ、俺ら。」
    「いや、まあ・・・どうでしょうね・・・」
    迷惑だよ、バーカ!早く出て行け!と言えたら、どれほどスッとすることでしょう。
    しかし、そんなことは絶対に言えません。
    「けどね、俺らも迷惑しとうったい。」
    「はあ・・・」
    「あれ、うるさかろうが。」
    Aは、オートロック緊急解除ボタンのことを言っているようです。
    「あれ鳴ったら眠れんけんね。俺らも迷惑しとうったい。」
    ・・・鳴らしているのはお前じゃないか、と思いましたが、実はそれを証明する手立てがないのです。

    そうなのです。
    僕らが住んでいる集合住宅には防犯カメラはついていませんでした。
    なので、状況から見て明らかにAだろと誰もが思っても、どうしようもないのです。
    いくら僕が向かいのビルに映るAの様子を主張しても、それを証明しようがありません。
    Aは、そのことを知っているのです。ですから、いつどんな時でもふてぶてしい態度でいられるのです。
    もちろん警察だって、いつもAが近くにいても犯人だと断定できません。

    「むちゃくちゃ迷惑やろ。ほんと眠れんけんね。」
    「まあ、そうですね。何で鳴るんですかね。」
    「知らんよ。勝手に鳴ろうが。」
    勝手になんて鳴りません。警察だってそう思ってます。けれどどうしようもないのです。
    「とりあえず、管理会社に連絡してみたらいいんじゃないですか。」
    「したけど、何もせんめえがあいつら。」
    「ああ・・・でも、僕らに言われてもどうしようもないですし・・・」
    「だけど、奥さん俺に文句あるっちゃろ。」
    「いや、文句あるわけじゃないですよ。」
    「いや、文句あるやん。」
    「ないですって。」
    「いやね、文句あるならはっきり言って。堂々と言ってくれていいけんさ。そしたら俺らも悪いとこあれば直すけんさ。」
    「いや、ないですよ・・・」
    と押し問答をしていると、Aの彼女が出てきました。今夜は飲んでいないらしく、おだやかな感じです。
    相変わらず目の下のクマは異常にありましたが・・・
    「なんか、すいません迷惑かけて・・・」
    「あ、いやいや・・・」
    「なんか、納得がいかないらしんですね・・・」
    「納得?」
    「そうって。だけん、呼んで、奥さん。文句あるなら直接言って。」
    「だから、なんか自分らが悪いって思われてるのが納得いかないみたいで・・・」
    「いや、いいとよ。悪いって思うなら思っていいけんさ、直接言ってよ。」
    このカップルは一体何を言っているのだと、途中からよくわからなくなりました。まあ、最初からわかってはいなかったですが・・・
    何といいますか、日本語が通じない。まともにコミュニケーションが取れないのです。
    男はわめくだけ。女はなんか納得いかないらしいんですね、と繰り返すだけ。
    というか、そもそもなぜ僕らがAの納得するしないに付き合わなければいけないのでしょう。そんなのAの問題ではないですか。

    そうこうしていると、たまりかねた奥さんが降りてきました。
    挑戦的な目で、Aを見据えています。
    「何ですか。」
    「いや、だけんさ、文句あるっちゃろ。言っていいよ。何?」
    「・・・・・・」
    奥さん、今日は黙っています。言ったって埒が明かないとわかっているのでしょうか。
    「だけんね、俺らは迷惑しとうったい。あれ鳴ってさ。」
    「・・・・・・」
    「大体、あれやろうが。あれ鳴っても誰も降りてこんめえが。だけん俺が止めるしかないったいね。」
    どうやら、Aの中ではそういうストーリーになっているようです。自分で鳴らしているくせに。」
    「おかしかろ?誰も降りてこんやん。普通はみんな出てくるよ。俺が前に住んどったとこはあれやもんね。こういうのあったらみんな出て来よったよ。」
    と、何故だか話はAの過去へと展開していきました。

    糸島、西区、中央区と彼らは転々としてきたらしく、端的に言うとそれらの場所に比べて、今住んでいるところは住民が冷たい、無関心だと、そういうことが言いたいようでした。
    Aもその彼女も、理路整然と話してくれるわけではないので、正直、何を言っているのか、何が言いたいのかはさっぱりわかりません。

    しかし、ともかく聞くことが大事だと、うんうんと耳を傾けていました。
    そのうち、Aはすっきりしてきたらしく、最後には上機嫌になって「今度一緒に飲もうや。」などと言い出す始末。
    ・・・寂しいの?誰かに話聞いて欲しかっただけなの?え、そういうこと?
    Aの彼女も機嫌がよくなったAを安らかな顔でうんうんとうなづきながら見ています。
    何も解決していませんが、なぜだかとりあえず一件落着的な空気になりました。

    結局、僕らも自宅へ引き返し、警察官たちも帰っていきました。
    Aも再びインターホンを鳴らすことはなく、その晩は平和が戻ってきたのです。

    一体、Aというのは何なんでしょう。
    攻撃された奥さんに仕返ししたいのかと思いきや、最終的には自分の話したいことだけ話して勝手にすっきりしている。
    そんなに話したいのでしょうか。そんなに誰からも相手にされていないのでしょうか。
    確かに、何の仕事をしているかわかりませんし、昼間もいつも家にいます。もしかしたら、仕事をしていないのかもしれません。
    彼女に話すだけでは満たされないのでしょうか。そんなに世界からはじかれた存在なのでしょうか。
    そう考えると、若干、同情しないでもないですが、だからといって飲み友達にはなりたくありません。

    この後、しばらくは落ちついた期間が続くのですが、そのまま終わるほど、Aは甘いものではありませんでした。

    つづく。


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