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    半径50メートル

    福岡の劇団HallBrothers・主宰幸田真洋の日記とか雑記とかいろいろ。

    プロフィール

    幸田真洋

    Author:幸田真洋
    劇団HallBrothers主宰・脚本・演出

    次回活動予定
    8月にKVA俳優学科2年生夏公演 作・演出。
    9月に劇団 HallBrothers一年ぶりの本公演。『300坪』作・演出。

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    2013.01
    05
    いろいろありました。シリーズはこちら。

    集合住宅の階下に住む、迷惑千万なクレーマーA。同棲中の彼女と派手な痴話喧嘩を繰り返し、オートロック緊急解除ボタンを押しては、警察がやってくる。
    住民たちはうんざりしつつも、関わり合いになるまいと沈黙していたが、ついに我が奥さんが正面きってキレた。


    前回、奥さんが対決姿勢を打ち出してからすぐには、何事も起こりませんでした。
    エントランスすぐ横のAの部屋の前は、出かける時帰ってくる時、嫌でも通らなければいけません。
    その度に、ドアがガチャリとあいてAがヌッと現れ、「テメエら、この間はよくも・・・」と言われるのではないかとビクビクしていましたが、もちろんそんなことはありませんでした。
    「ちょっとは反省したんじゃないの?」
    と奥さんは脳天気なようでしたが、この数か月、Aの粘着質ぶりはわかっていたので、僕はそのうち何かあると戦々恐々としていました。
    そしてやはり、僕の想像は正しかったのです。

    ある晩、インターホンが鳴りました。
    絶対Aだと思い、カーテンの隙間から向かいのビルの窓ガラスに映ったエントランスの様子をこっそり眺めてみました。
    やはり、Aです。
    オートロック操作盤の前にじっと立っています。
    生唾を飲みこみ、その様子を眺めていると、Aの指が操作盤に触れました。
    そして鳴る、我が家のインターホン。
    「あいつ?」
    と奥さんは臨戦態勢です。
    「うん・・・」
    「出る?」
    「い、いや、出なくていいよ。」
    何するかわからないようなヤツです。いきなり刃物とか持ち出されてもたまったものではありません。
    「しばらく様子見ようよ。」

    ピンポーン。

    インターホンは数分おきになります。
    もちろん、Aです。じっと操作盤の前に立っています。
    血の気の多い奥さんをなんとかなだめながら、僕はただただAの様子を観察していました。

    と、おもむろにAがオートロック緊急解除ボタンを押しました。けたたましい音が辺りに鳴り響きます。
    「警察、警察呼ぼう!」
    すぐに110番をし、事情を説明しました。
    10分ほどして、すぐに三名の警察官がやってきます。
    エントランス付近にいたAは事情を聞かれていましたが、何やらわめきはじめました。
    「だけん、話しさせろって言いよったい!」
    明らかに、僕らのことを言っているようです。
    警察官たちはわめくAをとりあえず部屋の中へ押し込め、僕らの部屋へと上がってきました。
    「なんか、話しさせろって言いようけど、どういうこと?」

    どうもこうもありません。Aは前回奥さんに怒鳴られたことを逆恨みしているだけで、何も話すことなんてないんですから。
    警察官たちにこれまでの事情を話し、今夜はとりあえず実家に避難することにして、エントランスを出るまで付き添ってもらうことにしました。
    急いで荷物をまとめて、部屋を出ます。
    まず、二名の警察官が先に降りて行きました。
    その後に僕、奥さん、そして残る警察官を続くはずでしたが・・・

    先行の警察官二名が降りていくと、すぐにガチャリとドアが開いてAが出てきました。
    「(部屋に)入ってろ。」
    若い警察犬がAをたしなめますが、聞く耳持ちません。
    「いやいや、俺はあいつらに話があるっちゃけど。」
    Aの目は、階段の途中で止まっている僕をロックオンしています。
    「いいけん、入っとけ。」
    「だけん俺はあいつらと話があると。あんたら関係ないやろ!」
    警察官の圧力に全く屈せずわめくA。
    「奥さん出しいよ。文句あるっちゃろ。」
    Aは僕に怒声を浴びせます。
    「いや、出せません。」
    「いやいや、なんで?俺は奥さんと話しがあると。」
    「じゃあ僕が代わりに話しますんで。」
    「だけん、奥さん出しいよ。」
    「出せません。」
    僕なんかよりたくましいですが、一応女性である奥さんを危険にさらすわけにはいかん、というヒロイックな気持ちも若干はありましたが、それよりもこれ以上火に油を注がれてはたまらないという思いがありました。
    「とりあえず、話します。」
    後ろにいた年配の警察官にそう言って、階段を下りました。

    つづく。



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