RSS
    Admin
    Archives

    幸田村

    福岡の劇団HallBrothers・主宰幸田真洋の日記とか雑記とかいろいろ。

    プロフィール

    幸田真洋

    Author:幸田真洋
    劇団HallBrothers主宰・脚本・演出・役者。

    次回公演は2018年1/31~2/3
    @パピオビールーム大練習室
    キビるフェス~福岡きびる舞台芸術祭~2018

    『となりの田中さん』を再々演します!

    最新記事
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    最新コメント
    リンク
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QRコード
    Powered by fc2 blog  |  Designed by sebek
    2012.11
    13
    いろいろありました。シリーズはこちら。

    クレーマーで、かつ派手な痴話喧嘩を繰り返す迷惑な階下の住民Aとその彼女。
    Aは部屋の外へ締め出されると、オートロック緊急解除ボタンを押すという迷惑行為を学んだ。


    一か月に一回は喧嘩をするAとその彼女。
    そして必ず緊急解除ボタンを押すA。
    警報音は夜中の住宅街に鳴り響き、Aは素知らぬ顔。
    僕は毎回警察に電話をし、警察が「またか」という顔でやってくることが数か月続きました。

    ある夜。
    23時ごろに帰宅し、遅い夕食を終え、奥さんと一杯飲んでいると突然インターホンが鳴りました。
    時計を見ると0時を回っています。
    こんな時間にインターホンを鳴らすような非常識なやつは・・・嫌な予感がよぎりました。
    奥さんと顔を見合わせ、どうしようと困惑していると再びインターホン。
    面倒くさいけれどこれは出るしかないと、インターホン越しに返事をすると、やはりAでした。
    「ちょっと話があるっちゃけど、こっち来るか、そっち行っていいかいな。」
    Aはふてぶてしい声で言います。Aの部屋に行くのは恐ろしかったので、こっちへ来てくださいと返答しました。

    階段を上がってくる音が聞こえ、部屋のチャイムが鳴ります。
    奥さんは部屋に残し、扉を閉め、僕一人で玄関のドアを開きました。
    「悪いね、夜遅く。」
    相変わらず不健康な顔をしたAが立っています。

    「警察、呼んだろ?」
    「・・・え?」
    「いやいや、何回か警察呼んだろ?俺ら派手に喧嘩するやんか?」
    「ああ・・・」
    「で、何回か警察呼んだろ?」
    「ああ・・・いや・・・」
    「いいっていいって、わかっとうって。いつも警察来るけんさ。呼んだやろ?」
    「ええ・・・まあ・・・なんか警報音が鳴ってるって・・・110番したことはありますけど・・・」
    一瞬、何か文句をつけられるのではと身がまえましたが、よく見るとAはどことなく上機嫌でした。

    「悪かったね。」
    「ああ・・・いや・・・」
    「いや、今日昼間さ、引っ越しようやつがおったけんさ、もしかしてあんたんとこかな、と思って。」
    確かに、昼間引っ越しをしている部屋がありました。おそらくAがうるさくて出て行ったんでしょうが・・・
    「いやいや、うちは別に・・・見ての通りです。」
    「俺らのせいで引っ越すとかなったら嫌やけんさ。俺らも迷惑かけとうけんね。」
    一応、迷惑かけていることは認識しているようです。
    「それを確かめに来たったい。」
    「ああ・・・そうですか・・・。いや、まだ引っ越さないですよ。」
    「そうね。ならいいけど。」

    何故だか僕はAから妙な親しみを持たれていました。
    僕は嫌ですが、Aは勝手に僕のことを仲間みたいな意識でいたんでしょう。なので、僕が自分のせいで引っ越すことになったのではないかと心配したようなのです。

    「これ、迷惑かけたけんさ・・・」
    と、Aがおもむろに液体洗剤のダウニーを差し出しました。
    「・・・は?」
    「いや、迷惑かけたけんさ。もらって。」
    「ああ・・・いや・・・」
    「いいけん。結構ニオイがすごいらしいよ。」
    「ああ・・・そうですか・・・じゃあ・・・」
    断って逆ギレされても嫌なので、ダウニーをもらうことにしました。
    「ホント悪かったね。いや、俺もストレスたまっとったけんさ。」
    「ああ・・・いや・・・」
    ストレスがたまっていたからといって人に迷惑かけていいというものではありませんが、改心して今後おとなしくなるのなら言うことはありません。

    「今度、一緒に飲みたいね。酒飲めると?」
    「ああ・・・まあ、それなりには・・・」
    「飲めそうな顔しとうやん。」
    「いや、それほどでも・・・」
    Aはやたらフレンドリーに接してきます。僕も突然キレられたら嫌なのでへらへら調子を合わせていると、いきなり部屋の扉が開いて、うちの奥さんがものすごい勢いで飛び出してきました。
    「あなた何時だと思ってるんですか?」

    奥さんは目がつりあがり、充血して、激しく怒っていました。
    「大体、こんな時間に来ること自体が非常識でしょ。で、何が言いたいんですか?何の用なんですか?え、何時だかわかってます?おかしいでしょ?おかしいことわかってます?」
    と、ものすごい勢いでまくし立てます。

    Aと敵対したくないと思っていた僕はアワアワして、けれども一度火がついた奥さんを止めることはできません。
    一方Aは、なんと表現したらいいのかわかりませんが、一切の思考が停止したかのようにピタリと止まっていました。
    よく小説なんかで「穴のあいたような目」という表現が出てきますが、まさにそんな感じの目で、感情も何もないような、無といった雰囲気で停止していました。

    やがて、Aはゆらりと動きだし、玄関のドアを開けました。
    「いや、あの・・・すいません・・・」
    僕はAに恨まれないよう、別に謝らなくてもいいのに謝ったりします。
    「いいよ。奥さんの言う通りやけん。悪かったね。ただ、仲良くしたかっただけやけんさ・・・」
    Aはゆっくりと階段を下りていきました。


    奥さんは、部屋でじっと僕らの様子を聞いていてだんだん怒りがわいてきたそうです。
    さんざん迷惑かけまくっていて、本当に謝罪の気持ちを伝えたいならまず深夜に来るな、と。
    しかも謝ってさっと帰ればいいのに、うだうだと無駄話をして、お前何がしたいんだ、と。

    もちろん奥さんの気持ちもわかりましたが、触らぬ神にたたりなし、僕は対決姿勢は打ち出さずになんとかやり過ごしたかったんですが・・・


    この後、Aは明らかにうちの奥さんを敵視するようになっていくのでした。


    つづく。


    Comment

    非公開コメント