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    幸田村

    福岡の劇団HallBrothers・主宰幸田真洋の日記とか雑記とかいろいろ。

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    幸田真洋

    Author:幸田真洋
    劇団HallBrothers主宰・脚本・演出・役者。

    次回公演は10月末。
    劇団初の県外公演です!

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    2011.12
    14
    Category : 日記
    夜。地下鉄で家路についておりました。
    忘年会シーズン、車内はアルコールのにおいを漂わせたサラリーマン達でにぎわっています。
    僕と奥さんの座る向かいの座席にも、赤ら顔で気持ち良さそうに眠っている若サラリーマンがいました。

    ある駅で、二人組のサラリーマンが乗ってきました。
    僕らの向かい、若サラリーマンの隣が空いていました。二人組のうち、サラリーマンAがそこへ腰をおろします。
    サラリーマンBもその隣に座ろうとしましたが、いささか空きスペースが狭いようです。
    しょうがなくサラリーマンBはつり革につかまり、立っていました。

    と、ふっと目を覚ました若サラリーマンがその様子を見て、おもむろに立ち上がりました。
    サラリーマンBに「どうぞどうぞ、」と言っております。
    サラリーマンAとBは「いやいや、そんな、いいですよ。」と恐縮しています。
    しかし、若サラリーマンが「どうぞどうそ、」と言いながら席を離れ、僕と奥さんが座る前へやってきました。
    「じゃあ、」とサラリーマンBはAの横に座りました。
    若サラリーマンは僕らの目の前で、つり革につかまっています。
    そして、つかまったそばから「ムニャムニャ・・・」と気持ち良さそうに寝入ってしまいました。

    その様子を見上げながら、
    「こんなに泥酔してるのに席譲るなんて・・・えらいね。」
    とそっと耳打ちする奥さん。
    「そうやね。」
    と答える僕。
    二人で感心していると、若サラリーマンの体が、地下鉄の揺れに合わせて右に左に大きく揺れ始めました。
    つり革を支点に、ぐわんぐわんと大きく揺れます。
    「ちょっと・・・大丈夫、この人・・・?」
    「そ、そうやね・・・」
    見てる僕らが思わずヒヤヒヤしてしまうほど、右に左に大きく揺れています。
    そのうち、つり革を持つ手がスルリと離れて、そのまま吹き飛んでいきそうなほど揺れています。
    しかし、若サラリーマンは気持ち良さそうな顔で寝入っていて、自分の体が危険な状態にあることなど微塵も感じていない様子。
    まあ、人間というのはすごいですね。
    体は思い切り脱力して、右に左に、いいように振られているのに、右手はしっかりとつり革を握り締めている。
    この脱力は、俳優として見習うべきなだあとちょっとだけ感心したりもしましたが、まあ、危ない。
    僕らを含め、周囲の乗客はぎょっとして彼を見つめています。

    「譲ろうか・・・」
    と奥さん。慌てて立ち上がる僕。
    「どうぞ・・・ここ、どうぞ・・・」
    と声をかけるも、若サラリーマンは「ムニャムニャ・・・」と夢の中。
    「・・・そのうち目覚まして座るか。」
    とりあえず僕らは座席から離れました。

    僕らが座っていたのは座席の一番端、手すりがあるところでした。
    若サラリーマン、今度はその手すりに巻きつくようにして眠っています。
    まるで、
    「君、ヘビを表現してみなさい。」
    と先生に言われた演劇学校の生徒がヘビを表現してみたかのように、見事に、まさに「巻きつく」という表現がぴったりなさまです。
    これも俳優として見習わなければいけないなあとちょっと感心したりしましたが、とりあえず手すりに巻きついているので、どこかへ吹っ飛んでいってしまう危険はなさそうです。
    と、ほっと胸をなでおろしたのもつかの間、

    「あ、乗り過ごした。」
    と奥さん。
    見ると、若サラリーマン、閉まっていくドアの前で困った顔をしています。
    どうやら、本当は今停車した駅で降りたかったようですが、ハッと目を覚ましたのはドアが閉まりだした時。
    慌ててドアに駆け寄るも、無情にもドアは閉まったのでした。

    再び、つり革を握り締めた彼。握り締めて3秒も経たないうちに寝入る彼。そして、ぶらんぶらんと左右に大きく振られる彼。

    次に停車する駅は、僕らも下車する室見駅。
    彼が乗り過ごした藤崎駅と室見駅は隣同士で、距離も近い。室見で降りれば藤崎まで歩いて帰ることはできます(普通の状態ならば)
    しかし、彼はこんこんと眠っている。ぶらんぶらんと左右に揺れている。まるで、つり革につかまって悪ふざけをする小学生のように揺れている。
    「ねえ、起こしてあげたがいいんじゃない?」
    と奥さん。
    「いいよ。近づいたら危険だよ。」
    と僕。

    そのうちに、室見駅に到着しました。
    もちろん僕らは降りました。そして、彼は・・・今度はパッと目を覚まし、下車しました。
    いや、人間すごいものですね。
    到着するその時まで「ああ、また乗り過ごすな。」と100人中100人が思うほど寝入っていたのに、パッと、何の前触れもなく起きました。
    「今度こそは絶対乗り過ごすまい。」
    と酩酊した頭の中でも意識していたのでしょうか。その意思の力たるや。

    エスカレーターに向かう人波の中、右に左にふらふらと千鳥足の彼。
    「いいか、酔った時の演技はこうやるのだ。」
    と演劇学校の教授が生徒にやってみせるかのように、まさに千鳥足のお手本のような千鳥足。
    昔は「そんなベタな千鳥足の人なんていないよ。」と思っていた僕ですが、街中を見渡してみると結構ベタな千鳥足をしている人っていますよね。
    若サラリーマンもそんな千鳥足でエスカレーターに乗りました。
    そしてエスカレーターの手すりにつかまった瞬間、顔をうずめてがっくりと寝入ってしまう。
    「これ、このまま上に到着したら、彼、こけてしまうんじゃない?」
    と心配する奥さんをよそに、上についた瞬間に「スパッ!」と顔を上げて目を覚ます彼。無事にエスカレーターを降ります。
    すごい。あれだけ酔っているのに、体が「そろそろエスカレーターが終わる」と察知するのでしょうか。
    その体の危機察知能力、舞台俳優として見習いたいものです。

    そして彼は、相変わらずまっすぐ歩けないままで、それでも階段を上がって地上に出て、藤崎駅の方へ歩いて行ったのでした。
    きっと彼ならば、まわりをヒヤヒヤさせつつも無事、家にたどり着いたことでしょう。


    忘年会シーズン、飲みすぎには気をつけましょう!