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    幸田村

    福岡の劇団HallBrothers・主宰幸田真洋の日記とか雑記とかいろいろ。

    プロフィール

    幸田真洋

    Author:幸田真洋
    劇団HallBrothers主宰・脚本・演出・役者。

    次回公演は10月~11月。大分・福岡で!

    大分舞台芸術フェスティバル参加作品
    『だめな大人』

    10/28.29@大分 AT HALL
    11/9~12@福岡 博多リバレインホール

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    2014.08
    04
    Aに消火器を撒き散らされ、鍵穴をボンドで詰められて、もうこれは出て行くしかないと決意した僕なのであった―

    それからの行動は早かったです。
    まずは、その日のうちに身の回りのものを友人に手伝ってもらってまとめ、翌日、劇団員数名に手伝ってもらって、本格的な引越し作業に取り掛かりました。
    ダンボールに荷物を詰め、表に車を回します。
    車の前に一人ついていてもらい、部屋から車までは劇団員たちに荷物を運んでもらいました。
    僕が動いていたら、絶対Aの野郎が出てきますからね。
    僕は顔を合わせないように、部屋の中で片付けをします。
    しかし、こういう時、劇団っていいですね。すぐに駆けつけてくれましたし、ホントに助かりました。
    彼らが荷物を運んでくれている時、一度、Aがドアを開けて出てきたそうです。
    じっと見ていたらしく、メンバーの一人が
    「ご迷惑かけてすみません。」
    と言ったら、
    「ああ、」
    とだけ答えたそうです。
    不健康そうな顔で気持ち悪かったと言っていました。

    服や雑貨、パソコンなどは車に詰め込み、僕の車だけで足りない分は劇団員の車を出してもらいました。
    冷蔵庫とかテレビとか、車に乗らないものだけ引越し屋さんにお願いし、できるだけ費用がかからないようにします。
    そうして、一日二日中には引越しを完了させました。

    幸い僕らにはすぐ近くに帰れる実家がありましたし、引越し作業を率先して手伝ってくれる仲間もいたので、以後、Aと顔を合わせることもなく、きれいさっぱりサヨナラできましたが、もしこれが遠い地で、周囲に頼れる仲間がいなかったら・・・と思うと、ぞっとします。

    最後の荷物を車に詰め込み、部屋の掃除も済ませて、いよいよ退去という時に、どうしてもしておきたいことがありました。

    かつて、Aにもらった液体洗剤ダウニー。

    使ったのちに
    「やっぱあれ返してくれん?」
    とか言われてもイヤだし、大体、気持ち悪かったので一回も使ってなかったのです。
    これを、Aの野郎に突き返したい。
    Aの部屋のインターホンを鳴らし、
    「もう引っ越すんで、これ、返します。あ、一回も使ってないんで。どうぞ。」
    と鮮やかにAの鼻っ面に突き出してやりたい―と妄想しましたが、小心者の僕にはそんなことできません。

    結局、Aの部屋の前、廊下に置いてきました。
    Aがドアを開けたら、ダウニーとこんにちわするように。
    一回も使われていないダウニーを見て、結局、あなたとわたしは溶け合うことができませんでした、という文学的なメッセージ(笑)にAが何かを感じ取ってくれればいいですけど。まあ、無理か。

    こうして、僕らは2年間住み慣れた場所から出て行ったのでした。

    Aと初めて会ったのは、確か3月の終わり頃のことだったと思います。
    そして、僕らが出て行ったのは9月の終わり頃。
    半年です。
    たった半年で、生活は破壊されてしまいました。

    あの時、僕がキレてAに怒声をあげなければ、また違ったのかな、とも思います。
    奥さんがジェスチャーをしなければ、こうならなかったのかな、とも思います。
    あるいは、Aの誘いに応じて、酒を酌み交わしていれば・・・

    いや、結果論ですね。
    半年の間にAの行動はエスカレートしていっていましたし、どうやったって、いずれ僕らにも被害が及んできたでしょう。
    僕らが出て行くか、彼が出て行くかのどっちかしかなかったと思います。

    結局、彼は何だったのでしょうか。
    普通の人は気にならないような足音などに、過敏に反応していたので、精神の病気だったりしたのかもしれません。
    もしくは、薬物中毒とか。
    働かずに、お酒と煙草ばかりやっていたので、まあ、普通でないのは確かです。
    (そういえば、毎週Aの部屋から出るゴミ袋は、袋いっぱいにクリアアサヒの缶が詰まっていました。袋がはちきれんばかりにクリアアサヒの空缶です。いくらなんでも飲み過ぎでしょう。)

    もしかしたら、心を病んでいて働けなかったのかもしれません。
    空虚で、寂しかったのかもしれません。
    ここに来るまでの過程で、いろいろ不幸なこともあったのかもしれないし、報われずに絶望的な思いが積もっていったのかもしれません。
    そう考えると、同情の余地はないこともないですが、まあ、僕からするとそんな事は知ったことではない。
    彼がどんなに大変であろうと、だからといって、迷惑こうむるのはごめんです。

    ・・・まあ、彼のおかげで台本のネタができましたし、結果、九州戯曲賞までいただいので、それはそれで良かったのかな、とも思いますが。

    その後、Aは出て行ったそうです。
    出て行った、というか、追い出されたという方が正しいのかもしれませんが・・・

    どうも家賃を滞納したらしいんですよね。
    何か月か続けて滞納すると、管理会社も退去勧告を出せるらしく、それで出て行くことになったようです。
    彼が出て行った部屋は、壁にボコボコ穴が開いていたとのこと。
    修理代は親御さんにでも請求されるんでしょうね。彼に支払い能力があるとは思えませんから。

    Aは今頃、どこでどうしているでしょう。
    相変わらず、住民に難癖つけて、暴れているかもしれませんね。
    もしくは、病院にでも入れられているのかもしれません。

    そういえば、引っ越してからしばらくして、近くにある喫茶店に行ってみたことがあります。
    夫婦でやっているこじんまりした喫茶店で、よくランチを食べに行っていたので、挨拶がてら顔を出したのです。
    僕が引っ越したんです、と言うと、おばさんが
    「いいねえ。あたしたちはほら、引越したくても、店あるけんね。」
    と、ため息をついていました。
    「あの後、なんかありました?」
    「あ、そういえば、この間、救急車が来とったよ。」
    「え?」
    「自分で呼んだのか知らんけど、自分から乗り込んで行きよった。二三日して戻ってきたみやいやけど。」
    「ああ・・・」

    ・・・謎です。
    また彼女と喧嘩して、負傷したのか、それともいよいよ頭がヘンになっていくAを見て、彼女が呼んだのか。

    まあ、なんにしろ、今もどこかでしぶとく生きていると思います。
    弱いくせにしたたかで、ずる賢くて、しつこいですからね。
    ・・・あ、弱くないですね。そういうやつが一番強い。生き残っていく、という点では強いんです、Aは。


    というわけで、長々続けてきましたこのシリーズも終わりです。
    お付き合いいただき、ありがとうございました。

    Aとのあれこれは、昔、近所のオッサンに日本刀を振りかざされ、怒鳴られたた時以来の衝撃でした。
    あ、この話はまた別の機会に・・・







    2014.08
    03
    IMG_0141_convert_20140803184954.jpg

    撒き散らかされた消火器の粉。

    IMG_0140_convert_20140803184942.jpg

    床一面にびっしり。

    IMG_0144_convert_20140803185027.jpg

    狙いは僕らの部屋だったようです。

    IMG_0142_convert_20140803185013.jpg

    Aの部屋のドア。穴が開いています。

    IMG_0147_convert_20140803185045.jpg

    ボンドが詰められたオートロックの鍵穴。オートロックが使えません。

    IMG_0148_convert_20140803185058.jpg

    こちらもボンドでしっかり塞がれていました。

    IMG_0150_convert_20140803185111.jpg

    破壊された緊急解除ボタン。何故だかカバーが僕らのポストに投げ込まれていました。


    Aから逃れるために実家へ身をよせ、一晩があけました。
    翌日、友人を伴って家へ帰ってみます。
    と・・・エントランスの外側から、すでに異様な雰囲気が漂っていました。
    妙に埃っぽい。
    まるでおばけ屋敷をドキドキしながら進むように、一歩、また一歩とドアに近づいていきました。
    そして、ドアの向こうに広がる惨状。写真の通りです。

    その光景を目の当たりにして、言葉を失いました。

    最初、何が起こっているのか全くわかりませんでした。
    後ろをついてくる友人に、
    「・・・な、なんかまかれてる。」
    と言うと、友人がドア越しに見て、
    「・・・あれ、消火器の粉じゃない?」

    確かめるために、とにかく中へ入ろうと鍵を差し込もうとすると・・・
    こちらも写真の通り、鍵穴がボンドで塞がれています。
    そして、ドアを見ると、施錠した際に出る金属の棒にもボンドが塗りたくられ、動かなくなっています。
    結果、オートロックが機能しなくなっており、ただのドアとなっていました。
    なので、開けることはできたんですが・・・

    友人がドアを開け、一歩、足を踏み入れます。
    足元に散乱しているピンク色の粉を触って、
    「消火器」
    と小声で教えてくれました。
    二階の僕らの部屋がどうなっているか気になるところでしたが、まずは警察を呼ぼうと外へ出ました。

    すぐに馴染みになったおまわりさんたちが来てくれました。
    おまわりさんたちも惨状を見て、あ然としています。
    「とにかく・・・部屋まで行ってみましょうか。」

    おまわりさんと一緒に、二階へ上がりました。
    と、写真のように、僕らの部屋のドアに消火器を吹きかけた後があります。
    そして・・・部屋の鍵穴もボンドで塞がれていました。
    「・・・これはヒドイ。」
    おまわりさんも憤っています。
    このままでは部屋に入れないので、管理会社に電話をしました。
    管理会社から鍵屋さんを紹介してもらい、今度はそちらへ電話をします。すぐに来てくれるとのことでした。
    鍵屋さんが来るまでの間は交番に行って、事情聴取。
    おまわりさんも、絶対犯人はAしかいないと確信していましたが・・・証拠がない。
    そうなのです。
    昨日の今日のことですし、絶対にあいつしかいないと誰もが思っていましたが、証拠がないのです。
    使われた消火器が見つかれば、それを糸口に窃盗などで立件できる可能性もあるそうなのですが、ずる賢いAのことです、近くの室見川にでも投げ捨てたかもしれません。
    管理会社にこれまでの事情も説明しましたが、かといってAを追い出す権限はないそうです。
    Aのような迷惑千万な住民でも、法律でしっかりと守られているため、どうすることもできないと。

    ・・・まあ、やられ損ですよね。

    さすがに、このままここに留まっていたって、何のメリットもないと思いました。
    Aはこれからも執拗に嫌がらせをしてくるでしょう。絶対に捕まらないギリギリのラインのところで。

    なので、この日、家を出ることを決めました。

    仕事中の奥さんに電話し、事情を説明して、説得し、鍵屋さんに鍵を開けてもらってからは友人に手伝ってもらって、荷物をまとめ始めました。

    こうして、引っ越さざるを得なくなったのです。

    つづく(あと少しで終わります)













    2014.08
    02
    奥さんのジェスチャーをキッカケに、ついにAから標的にされる僕ら。
    ここから、大変な目に…

    初秋の頃だったでしょうか。
    僕は家で台本を書いていて、奥さんは出かけていました。
    夕方、奥さんが帰ってきます。それから二人で出かける約束をしていたのですが、僕はちょうどノッていた時。あと5分待って欲しいと言いました。
    「車、すぐ目の前に置いとうっちゃけど。」
    「大丈夫大丈夫、すぐ終わる。」

    僕らが住む集合住宅の前は狭い路地になっていますが、一方通行だし、車通りも多くない。
    しっかり端に寄せて停めていれば、5分くらい問題ないのです。
    しかし、これがいけなかった…

    台本を書き終え、手早く準備をし、すぐに部屋を出ました。
    時間にして10分も経っていなかったと思います。
    そして、車に乗り込んだらー

    Aがエントランスからじっと見ている。

    「ちょ…なんかこっち見ようよ。」
    「いいよ、放っといて行こう。」
    と車を出そうとすると、Aはのそのそとこちらへ近づいてきます。しかも、裸足で。

    ええーっ!?

    僕らが部屋から出る音を聞いていたのでしょう。そして、裸足で駆け出してきたんでしょう。っていうか、なんで裸足!?

    Aは車の前に立ち塞がりました。そして、じっとしています。
    いくらAといえども、跳ね飛ばして走り出すわけにはいきません。
    僕らは唖然ときて顔を見合わせました。
    と、おもむろにAがしゃがみ込みました。
    しょうがないので外に出ます。
    するとAはナンバープレートに手をかけようとしているではありませんか。
    「ちょっ、何ですか?」
    「あ?」
    「いや、何してるんですか、やめて下さいよ。」
    「ナンバーを取るったい。」
    「え、何でそんなことするんですか?」
    「いやいや、ここ停めていいと?ねえ?この建物の前にさ、停めていいと?」
    「いや、すいません。それはこっちが悪かったですけど、5分10分なんで、」
    「だけん停めていいとって?駐車違反やろ?」
    「いや、あの…すいません。でも、何でナンバー取るんですか?」
    「警察に突き出すったい。駐車違反しとうって。」
    「じゃあ…今、警察呼んで下さい。」
    「何で呼ぶと?呼ばんでいいよ。」
    「え、だって駐車違反のこと言いたいんでしょ?」
    「警察は関係なかろうが。」
    「いやいや、駐車違反ってことを言いたいんでしょ?だったら警察に来てもらいましょうよ。」
    「だけん、警察は関係なかろ?」

    …この矛盾した論理。
    Aはとにかく難癖つけたいだけなのです。
    そして、ずる賢いのが決して車には手を触れないところ。
    ナンバーを触ろうとしたら僕が降りてくるのが分かっていて、わざとそういう仕草だけするのです。
    実際に手を触れたり、ナンバーを引き剥がすと器物損壊罪になりますからね。
    そしてそれは対・人に対しても同じことで、上記のように苛つかせ、挑発するような言動は取りますが、絶対に自分から手は出さない。
    しばらく押し問答が続いて、僕も我慢の限界でした。
    そして、この数日前に、Aとその彼女は深夜に激しい痴話喧嘩をし、外へ閉め出されたAがドアをガンガン蹴りまくって、ボコボコに凹ませるという事件があったのでした。
    先端の尖ったものでドアを何度も突き刺したようで、ドアの表面は無残にもハチの巣のようになっています。
    それらの迷惑&異常行動が積み重なったのもあって、ついに僕は爆発してしまいました。
    「うるさいんじゃ、このボケが!警察呼ぶって言いよろうが!大体、なんやお前は!?迷惑かけることばっかしやがって!ドアもボコボコやないか!?お前んちかもしれんけど、まわりにみんな住んどるんじゃ、いい加減にしろ、ボケッ!」

    僕は基本ケンカなどしない男なので、人に罵詈雑言を浴びせることなど滅多に…というか芝居以外ではなかったんですが、さすがにこの時ばかりは堪忍袋の緒が切れました。

    Aは…無でした。

    全ての時間が止まったかのように、ピタリと止まっていました。
    「穴のあいたような目」という表現が小説で使われますが、正にそういう目で、あんな目をするやつは後にも先にもAしか見たことがありません。

    そして、唐突にスイッチが入ったように、
    「言ったな…お前言ったな…知らんぞ、どうなっても知らんぞ。」
    と呪いの言葉を吐くと
    「こいつ、(暴言を)言ったよ!オレに(暴言を)言ったよ!」
    と叫び出し、道行く人、車、通りかかる誰彼に喚き出しました。
    当然、通りすがりの人は何のことだかわかりません。
    自転車に乗ったおばちゃんはAの奇行におののいていました。
    「すいません、何でもないです、すいません、」
    僕はまるで介護ヘルパーのように、暴走するAの前に割って入り、通りすがりの人を逃がします。
    するとAは近くにある酒屋に駆け込み、喚いています。
    ちなみにこの間、裸足です。

    酒屋のおじさん、立ち飲みに集まっているサラリーマンたちもギョッとしていました。
    目の下に不気味な隈があり、よれたTシャツを着て(数日前の痴話喧嘩で破れていました。っていう着替えろよ、そんなの!)、裸足の30半ばらしき男が、
    「こいつ言ったけんな、俺に言ったけんな!俺は聞いたけん!通らんよ!逃げようとしても通らんよ!」
    などと意味不明なことを訴えかけてくるのです。
    それはもう、ギョッとするでしょう。
    そして、一体何のこっちゃ?とポカンとします。
    Aはその空気を察してか、酒屋を駆け出し、僕らの住まいの方へ引き返し始めました。
    と、いたいけな少年とお父さんが自転車に乗って並走しています。
    Aは少年の前に立ち塞がり、先ほどの言葉を喚きました。
    もちろん少年は何のことだかわかりません。恐怖で固まり、目を伏せていました。そりゃそうです。あんな顔まともに見たらトラウマになります。
    「何ですか?」
    お父さんが落ち着いた声でAに言います。しっかりしたお父さんです。
    「だけん、こいつがさ、駐車違反しとったったい。通らんやろ?それは通らんよ。」
    「え?どういうことですか?順を追って説明して下さい。」
    「すいません、あの、この人、あれなんで…」
    僕はお父さんに目で訴えます。
    お父さんは「ああ」とすぐに合点がいったようでした。
    「警察は呼びましたか?」
    「だけん警察は関係ないって」
    「呼びました。」
    奥さんが車から降りて言いました。
    僕らがもめている間に通報してくれたようです。
    「では、あとは警察と話し合って下さい。」
    お父さんは息子の手を引き、素早く立ち去りました。
    ほどなく、警察がやって来ます。
    もう何度もお世話になった交番のおまわりさんたちです。
    二人がAをなだめに行き、一人が僕の方へやって来ました。
    「どうしたと?」
    僕は手短に事情を説明します。おまわりさんももう分かり切っていることなので、
    「もう行っていいよ。あとはどうにかするけん。」
    と言ってくれました。
    そして、僕らは喚き続けるAを背に、車を発信させたのでした。

    その夜、帰宅するとやはりインターホンが鳴りました。
    もちろん、Aです。
    すぐに警察に電話し、来てもらいました。
    「今夜はここを出て、実家に行きます。どうせおまわりさんたちが帰ったら、またしつこくやって来ますから。」
    「そうやね、それがいい。」
    僕らが身支度をする間、一人が僕らの部屋の前で待機、二人がAの部屋の前で待機と、厳戒体制が敷かれました。
    そして僕らは無事に脱出できたのですが…

    あの晩、家から出た方が良かったのか、家に残っていた方が良かったのかは今でもわかりません。
    この後、Aは消化器を撒き散らしたのでした。
    次回はその写真付きでお送りします!








    2014.07
    30
    自転車を投げるなど、奇行がエスカレートしていくA。
    それでも矛先が僕らにまっすぐ向かってくることはなかったのですが、ついに…


    Aの部屋はエントランスのすぐ隣にあります。
    オートロックドアを抜け、エントランスに入るとすぐ右手にAの部屋のドアがあるんですが、毎日毎日、エントランスがタバコくさい。
    Aは相当なヘビースモーカーなのか、エントランスまでタバコのニオイが漏れ出ているのです。
    そして、今思えば流行りの脱法ハーブでもやっていたのかもしれません。
    煙がエントランスまで漏れ出ていたのはもちろん、時々、甘いニオイがしていたからです。
    (麻薬で甘いニオイがするものがあると聞いたことがあります)
    ギョッとするような、嗅いだことのないような甘いニオイで、あれは一体何のニオイだと奥さんと話題にしていました。

    で、またうちの奥さんが悪いことにやたらと鼻が利くのです。
    そんな彼女からしたら、毎日毎日、出掛けと帰り際にエントランスで不快なニオイをかがされてしまう…確かに尋常でないタバコと怪しい甘いニオイだったので、文句を言いたくなる気持ちもわかるのですが…

    ある日のことー

    昼間、奥さんと二人で出掛けることになりました。
    部屋のドアを戸締まりして、階段を降ります。
    階段の途中で、すでにAの部屋からのあのニオイが漂ってきました。
    エントランスに差し掛かるとニオイはMAXになります。
    そこでー奥さんが鼻をつまんで「クサイ」というアクションをしたのです。
    僕は慌てて「ダメダメ」と手を顔の前で降りました。
    こんな瞬間にAが出てきて文句を言われたらたまったものではありません。
    しかし、Aの部屋のドアはピクリとも動かず、僕らは無事、エントランスを通り抜けたのですが…

    その夜。
    帰宅してすぐ、0時ごろでしょうか、部屋のインターホンが鳴りました。
    ピンポーン…

    こんな時間にインターホンを鳴らすのはヤツしかいません。

    ピンポーン…

    何の話なのかわかりませんが、鬱陶しいので相手にしたくない。
    出ずにいると、

    ピンポーン…

    電気も消し、息を潜めてじっとしていました。
    しばらくして、階段を降りていく音が聞こえます。
    よかった、あきらめてくれたーと思いきや、オートロック非常警報ボタンがけたたましい音で鳴り始めました。
    来たー

    即座に110番し、おまわりさんが来てくれるのを待ちます。
    その間、10分ほど、警報は鳴り響いています。

    おまわりさんたちが到着すると、階下で何やらAが喚いています。
    警察が来たので、とりあえず一安心と、エントランスに降りてみるとー
    「昼間(鼻をつまんで、クサイと言うようなジェスチャー)こうしよっろ?」
    開口一番、Aは食ってかかってきました。
    「あんたの奥さんよ。(ジェスチャー)こうしよったろ?なん、あれ?文句あるなら、はっきり言ってくれん?」

    …何より恐ろしかったのは、Aがドアスコープ越しにエントランスの様子を眺めていたことです。

    きっと、二階の僕ら…いや、他の階の住民もでしょうけど、鍵をしめて、階段を降りるたびに、その音を聞きつけて、Aはドアスコープの前に張り付いていたのだと思います。
    その不毛な粘着性!
    そんなヒマがあるのなら、仕事探してくれよと言いたいところですが、いきり立っているAを前に言えません。
    「だけん、文句あるなら直接言ってくれん?(ジェスチャーをして)こうしよったろ、奥さん。」
    「いいけん、落ち着かんね!」
    すっかり顔馴染みになったおまわりさんがなだめてくれます。
    僕もおまわりさんがいることで、ちょっと強気になり、
    「いや、あの…タバコのニオイがキツイんですけど…」
    と言ってやりました。
    「タバコの煙もエントランスまで漏れ出てきていて、煙たいんですけど…」
    とも。
    Aは、
    「いや、そうかもしれんけど、だけん文句あるなら直接言って。」

    …今、言ったじゃないですか!

    ともかくAは奥さんがジェスチャーをしたことが気にいらないらしく、ひたすら「直接言って」を繰り返していました。

    …だからって、直接言っても何も変えてくれないでしょ?
    今までの行いからしてそうじゃないですか。
    僕もおまわりさんも、そんな気持ちでいっぱいだった…と思います。

    その日は結局、おまわりさんの仲裁もあって、事なきを得ました。

    しかし、この件以来、奥さんが標的にされ、ついに出ていかざるを得ない事件に発展するのでしたー

    つづく




    2014.07
    27
    一年数か月ぶりのシリーズ更新です。
    いろいろありました。シリーズはこちら。

    このシリーズは、以前僕が住んでいた集合住宅でのお話しです。
    迷惑千万な住人Aとその彼女。
    住民に「足音がうるさい」と激しいクレームをつけて追い出してしまう、深夜に激しい痴話ゲンカをする、そのあげく、Aはオートロックの外に締め出され(彼女は酔うと暴力性を発揮します)、オートロック緊急解除ボタンを押す(救急車やパトカーのようなものすごい音が鳴ります)―


    Aは一体、何の仕事をしているのでしょう。
    昼間は家にいて、酒を飲むか煙草を吸うか寝てるかのどれかです。
    ということは・・・無職、でしょうね。
    夜も酒を飲むか煙草を吸うか痴話喧嘩するか住民にクレームをつけるかのどれかですから、働いている形跡がまるでない。

    一度、朝方に作業着を着て外に立っているのを見かけたことがあります。
    軽トラックが迎えにきて、Aを乗せ、走り去っていきました。
    肉体労働をしているのかな、とも思いましたが、その姿を見たのは後にも先にも一度きりです。
    せっかく職が見つかったけど、すぐ辞めたかクビになったかもしれません。
    そりゃそうです、Aがまともに働けるとは思えないですから。

    そんなAですから、当然、ストレスは溜まるでしょう。(本人も迷惑行為を繰り返すのはストレスのせいと言っていました)

    そして、だんだんとエスカレートしていくようになってきました。

    ある日の宵の口。
    表通りからガッシャン!ガッシャン!と派手な音が聞こえてきました。金属がたたきつけられた時に鳴るような派手な音です。

    Aが暴れるのはたいてい夜中です。19時ごろの、まだ人通りも多い時間に暴れたことはなかった。
    しかし、この異常な音はAが何かしている以外に考えられないと窓の外を見ると・・・

    Aが集合住宅前に停めてある住民たちの自転車を道路に放り投げています。
    その中には僕や奥さんの自転車もありました。

    大胆に、道路の真ん中に放り投げています。
    会社帰りのサラリーマンがぎょっとした目で通り過ぎていきました。
    幸い、車通りがほとんどない路地でしたから、車と衝突する、なんてことはありませんでしたが、もしたまたま車が通りかかったとしたら、大変なことになっていたはずです。
    そのくらい大胆に、何の躊躇もなく道路の真ん中へ放り投げていました。

    僕らが住んでいる集合住宅の隣には、小さな居酒屋がありました。
    居酒屋のおばちゃんも何事かと出てきます。
    お客さんのサラリーマンたちも何事かと出てきます。
    道路に散乱している自転車たちを見て、ぎょっとしていました。
    彼らが出てきた時にはAの姿はなく、ただ無残に放り投げられた自転車たちが転がっているだけでした。

    おばちゃんとサラリーマンたちが、とりあえず自転車を道路脇によけます。
    僕も手伝いにいこうかと思いましたが、Aに出くわしたら恐ろしいと思ったので、動けませんでした。

    こんな時間に、しかも自転車を放り投げるなど、今まで見たことがありません。
    Aは一体どうしてしまったのかと事の推移を見守っていると―

    Aがのっそりと現れました。

    それから、おばちゃんを激しくののしり始めました。
    おばちゃんもサラリーマンたちも困惑しています。
    どうやら、居酒屋の音がうるさいとAは主張しているようでした。

    Aの住む部屋は居酒屋と隣り合っています。
    とはいえ、ぴったり建物がくっついているわけではなく、間には1mほどの通路があります。
    居酒屋からにぎやかなサラリーマンたちの笑い声が聞こえることもありますが、自転車を投げて怒りを表現するほどのレベルではない。というか、そもそも人の自転車をそんな表現に使わないでほしい。
    もちろん、居酒屋はその日急にオープンしたわけでも何でもないし、その日だけ特別にうるさかったというわけでもない。
    そこに居酒屋があって、喧騒があるのは何か月も住んでいるAだってわかりきっていることのはずですが・・・

    おばちゃんも負けじと対抗します。
    サラリーマンのおじさんたちも赤ら顔で「まあまあ」とか「そりゃそうがないよ」とかAをなだめています。
    しばらく口論が続いたのち、おばちゃんは埒があかん、といった風でさっさと店に引っ込んでいきました。
    追いかけようとするAをサラリーマンたちが止めて、またしばらく話していました。
    サラリーマンたちはAの主張を「うんうん」とか「ああ」とか聞いているようです。
    酔っているので、親身に、というよりも適当に聞いているようでした。
    それでもAは話し続けます。
    何分くらい話したのかわかりませんが、そのうち―Aはなんだか上機嫌になって、部屋に入っていきました。



    ・・・話聞いて欲しいだけなんかい!



    その日のその後は何事もなく、平穏に過ぎていきました。
    ただ、僕と奥さんの自転車が無意味に傷ついただけです・・・


    つづく。